コラム

2018.04.01

連載コラムvol.01「うまい話にはウラがある」

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うまい話にはウラがある

首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営しているスマートデイズがサブリース賃料の送金を停止し、事業が破綻しました。

同社はオーナーに対し、自己資金ゼロでシェアハウスを購入し、30年間「サブリース」で家賃保証することを謳い文句に業績を伸ばしてきました。

 

ところが、2017年10月に突然、物件オーナーに賃料減額を通知し、翌年1月17日と20日に開催した説明会で1月以降の賃料支払いをストップするという事態になりました。

 

高金利のフルローンで1億~3億円程度の物件を購入したオーナーは約700人に上るとみられ、賃料を絶たれたオーナーには月々100万円以上の持ち出しが発生するそうです。

 

このまま行けば、自己破産者が大量に出るのではないかと報道されています。現在では被害者の会も結成され、融資をしたスルガ銀行に対しても訴訟がされるようです。

 

また、注目されるのは、「かぼちゃの馬車」を購入したオーナーは、高年収のサラリーマンや弁護士、公認会計士などの有資格者が多いということです。

 

なぜ、このように属性が高い人々が、このビジネスモデルの欠陥に気づかず被害に遭う結果となったのでしょうか。

 

最近不動産投資を始める方からのお問い合わせが増えています。

不動産投資はやり方を間違えなければ、非常に有効な資産運用です。

スマートデイズの事件はやや極端な例ではありますが、このような事件が起こると、不動産投資自体が危険なものだと誤解されるのではないかと思います。

この事件の何が問題であったかを考えながら、初めて不動産投資をされる方に、弊社の考え方をお伝えしたいと思います。

 

「ずさんなプラン」

これから不動産投資を始める方には、不動産投資は投資というよりも一つの事業をご自身が始めるのだという認識を持っていただきたいと思います。

飲食店でも、小売店でも、必ず開業する前の下調べは入念に行うはずです。

シェアハウス「かぼちゃの馬車」の実態を調べるほど、その計画に無理があることに気づきます。

シェアハウスというビジネスモデルは悪いものではないと思いますが、他のシェアハウスと比べてもお粗末なつくりで、入居率が50%程度(それも賃料を値引きして)にしかないようです。

同社は地方から出てきた若者に、シェアハウスと仕事をあっせんすることで、賃料以外の収入が発生すると謳っていたようですが、実際はこの結果でした。

もちろん、シェアハウスでうまく経営されている方もいらっしゃるので、一概には言えませんが、どうも入居者間でのトラブルが多いようで、すぐに退去してしまうという話もよく聞きます。

少なくともシェアハウスに投資をされる方は、立地条件だけでなく、ご自身やお子さんがシェアハウスで生活したいかどうかを考えてみる必要があるのではないかと思います。

とくに今回のように女性限定とすることで、少なくとも人口の半分に入居者を絞ってしまうことになります。

我々不動産業者が見ればありえないようなプランでも、一般の方からすれば、セミナー会場で多くの人が申込みする姿を見ると、何となく良いものだと錯覚するものです。

しかしこれが、ご自身で開業する立場であれば、セールスマンに言われるがままに1億円もの借り入れをするでしょうか。

「セカンドオピニオン」

この手の会社の営業マンには厳しいノルマと高額な報酬が与えられており、売ることだけを目的にしている会社が多数存在します。普通の会社では想像できないような過酷な状況に追い込まれた営業マンは売るためなら何でも言うものです。

ある程度不動産投資経験があれば一目でわかるようなずさんなプランですが、営業マン自身も、ある意味、洗脳に近い状態になっていて、自分自身も本当に良いものだと思い込んでいる可能性もあります。

でたらめなセールストークでも、何時間も繰り返し聞かされることにより、それらしく思えてくるものです。

特に初めて不動産投資をする人は、1社の営業マンの話を鵜呑みにするのではなくて、複数の不動産会社、できれば個人の不動産投資経験者に相談してから購入することをお勧めしたいと思います。

慣れるまでは即決はしないこと、すこし時間をおいて冷静に考える。これが肝心です。

「銀行融資」

同社は当初、利回り8%という高利回りをうたい、顧客を獲得していましたが、それは物件価格が安いから高利回りというわけではなく、保証家賃を高く設定していただけのことでした。

融資をしたスルガ銀行は融資手続きに不正行為、与信資料の改ざんがあったのではないかとの疑いをもたれています。

当然、それが事実であれば、スルガ銀行とスマートデイズの詐欺的な行為は糾弾されるべきですが、問題点はそこだけです。不動産投資に対する融資に積極的な同社の姿勢に関しては評価されてもよいのではないかと思います。

スルガ銀行はフルローンが組めるので、自己資金を抑えたい人にはありがたい存在です。

今回のケースを例にとると、スルガ銀行は貸付金利が高金利(3.5%)ではあるものの、利回り8%であれば、4.5%のイールドギャップが取れるので、投資としては成り立ちます。

簡単に言うと、毎月の返済100万円にたいして家賃120万円をスマートデイズが30年間保証することにより、オーナーは毎月何もせずとも20万円が口座に残っていきます。

そのこと自体に問題はありません。問題なのは、スマートデイズが家賃を保証しなかったことです。

不動産投資のメリットは少ない自己資金で大きな投資ができる(レバレッジ効果)ということです。

融資を利用することは悪いことではありません。私がスルガ銀行を皆さんに紹介しないのは、それよりも低い金利で融資を組めるからです。

また、スルガ銀行の金利にたいして十分なキャップレートをとれる物件が少ないという理由もあります。

今現在、日本の不動産価格は高騰しています。

その背景にはオリンピックや中国をはじめとした海外の投資家の影響もありますが、1番の理由は銀行が不動産にお金を貸すからです。

銀行が貸すのを止めたら不動産価格は下がります。買えるのは資産家です。

競争相手がいなくなれば不動産は自然と値下がりします。

誰しも不動産の相場が下がった時に買いたいものですが、銀行がお金を貸してくれないので買えません。

今資産がない方でも、融資が受けやすい今、不動産を取得し、相場が下がった時には保有の不動産を担保として利用することで、さらに資産を増やすことができます。

仮に、今後も不動産相場が下がらないなら、保有不動産の価値も下がらないことになるので、家賃収入はすべて利益として考えられます。

「賃料は値下がりする」

最近よくサブリースの会社とアパートオーナーが裁判で争うという記事を見かけます。

スマートデイズの場合はさらにひどい内容で、低い入居率をオーナーには報告せず、新しい物件を販売した利益で家賃を保証するという自転車操業に陥っていました。

サブリースは下がります。理由は物件が老朽化すると家賃を下げないと借りてもらえないからです。

管理会社も営利企業ですので、いつまでも家賃保証を続けることはできません。

でも、それは問題ではありません。問題は保証できないことがわかっていながら30年保証を謳うことです。

一般居住用のマンションでも年数が経過すれば、マンションは老朽化し、賃料は下落します。賃料の値下がりを計算に入れたプランを立てて検討しないので、新築マンションを購入した人は失敗するのです。

初心者の方は中古マンションから始めることをお勧めします。

築10年もたてば、すくなくとも一度や二度の入れ替わりがあり、賃料が安定しています。

何よりも、他の部屋の賃料相場のデータも取れているのでより安全な計画を立てることができるのです。

また、マンション価格は一般的に新築から10年間で大きく値下がりします。

それは物件の価値が下がったのではなくて、新築価格に分譲会社の利益が上乗せされているからです。

分譲会社は営利企業なので、販売価格に利益を乗せるは当然のことで、これは問題ではありません。

問題は中古市場が分譲会社の利益を価格に組み込んでくれないということです。

そのため、新築で投資用マンションを購入すると、売却時に少なくとも分譲会社の利益分の損失が発生するわけです。

スマートデイズの販売した物件の新築価格は同種のものと比較してもかなり割高だったようです。

オーナーは売るにしても相当の損切を覚悟しなければなりません。

投資用マンションを購入する際は値下がり幅の少ない中古マンションをお勧めします。

「うまい話にはウラがある」

自己資金なしでシェアハウスを購入し、しかも30年間家賃が保証されるというのは実にうまい話です。

冷静に考えればそんなうまい話があるわけありません。

「かぼちゃの馬車」のオーナーは家賃が入らなくても、月々の返済はしなければなりません。

毎月100万円もの持ち出しは、いかに高属性の方が多いとはいえ、長期化するようであれば、続けていくのは難しいと思います。

今後のスルガ銀行の出方次第で変わると思いますが、「金利引下げ」や「期間延長」などのリスケ交渉がうまくいかなければ自己破産者が続出するでしょう。

あるいは、シェアハウスの運営で収益が上がらないのであれば、外国人向け民泊に変更するなどの思い切った事業転換も考えなければなりません。

被害者の方には気の毒としか言いようがありません。

特に今回、高属性の方が多く、特に士業の方は、自己破産により本業の資格に規制がかかり、仕事を続けられなくなります。

不動産投資は資産運用に有効ですが、一歩間違うと大変なことになってしまいます。

そうならないためにも、不動産投資は投資ではなく事業であるという認識を持っていただきたいと思います。

不動産投資は今日はじめて明日結果が出るものではありません。

コツコツと積み重ねていくものです。

そして、事業である以上、場合によっては撤退(売却)もありえます。

「かぼちゃの馬車」のオーナーが苦しんでいるのは撤退するリスクについての予測がなかったからです。

不動産を購入する際には、それが投資用であれ、自住用であれ、撤退(売却)についても考慮に入れることが重要です。

不動産は失敗して学ぶには高すぎますから。